我が天職は我が家にあり!
川端修
2019年12月初旬から世界中に広まったコロナ禍という緊急事態。
しかし、そんな世の流れと何ら変わりなく毎日を過ごしている自分がいた。
リモートワークという働き方が提唱される中、
私にとってそれがあたかも常識のように感じられたのはコロナ禍前から自宅で働くことを実践していたからだ。
ただ、きっかけは決して自分が最初から選んだ道ではなかった。
全ての始まりはコロナ禍の約5年前、
会社員生活でのストレスが蓄積しうつ状態になったことである。
当時、社会人10年目を過ぎていたが会社員としての生活は綱渡りのようにやってきた感じで、結婚直後に異動した新しい部署では業務になじめず一気に適応障害を起こしてしまう。
一時期はまっすぐ歩くのも困難な状態となり休職と復職を繰り返すのだが、
期限が来て退職が決まるとピストルで撃ち抜かれたような気持ちになった。
やがて退職後、実家でゆっくり過ごしていたある日のこと。
家族みんなで頭脳パズルの番組を見て気晴らしにクイズに挑戦していると、
なぜか家族の中で私だけが次々と正解している。
父親は大手銀行の元社員、母親は元学校教師、妻もテキパキと物事をこなす人で
学力や仕事ではとても及ばなかったが、このことをきっかけに私はアイディアやひらめきといった部分で何か違う力があるのかもしれないと感じた。
そして、何かそうした自分の力を活かせる仕事がないかネットで必死に検索し始めた。
情報を集め始めると、やがてインターネットでブログを立ち上げ稼ぐ方法があることを知る。
それまでインターネットと言えば会社の業務ではちょっと調べ物をしたり、お店を予約したりと誰でもできる雑務のような位置づけだったが、
それがメインの仕事になるというのはまさに目からウロコだった。
とりあえず、最初の取っ掛かりは無料で作れるブログの立ち上げで、
「Seesaaブログ」というシステムを使って2つのブログを立ち上げた。
一つは自分の日々の生活の中で気づいたことを気ままに書き留める日記的なブログ。
そして、もう一つはあるお題に対して自分でユニークなボケを考えて投稿する
「アメーバ大喜利」というサービスに関するブログ。
アメーバ大喜利は毎日頭の体操のために以前からやっていたのだが、
なぜそのボケを思いついたのかといった思考の過程をブログという形で反映させていった。
やがて、少しずつブログにコメントがついたり訪問する人が増え始め、
自分の発信がダイレクトな反応で返ってくるブログの楽しさに気づき始める。
そして、ブログランキングと呼ばれる人気ブログの紹介サイトにも登録し
ついに二つのブログはそれぞれのカテゴリーで1位を獲得するに至った。
会社員としては30代半ばでも本当に芽が出なかったが、
ブログを通してかすかな自信がわき上がり
何かの分野で1位になれたことが素直に嬉しかった。
その後、ブログの扱いに慣れてきた私は本格的に稼ぐため
有料のサーバーを契約しワードプレスというシステムを使って
「アフィリエイト」と呼ばれるネットビジネスに挑戦することにした。
アフィリエイトとは需要のあるテーマを題材にブログの記事を作成し、
そこに貼った広告を通して収入を得るというシステム。
独学ではわからない部分も多かったのでYouTubeで見つけた動画をきっかけに、
とある方のアフィリエイト講座に参加を決めた。
講座はわからないことを質問したり、進め方を相談しながらおこなうスタイルで、
学生時代通信教育に親しんでいたせいか全く苦にならなかった。
そして、講座に参加したメンバーは本業のかたわら取り組む人もいれば
私と同じように普通の仕事ができなくなったりと多種多様だ。
そんな今までに出会ったことのない新時代の動きを感じながら、
コミュニティの掲示板に自分の状況を書き込んだり、時には顔を合わせて飲んだりとお互い刺激を受けながら取り組んでいった。
その後、時間はかかったが一つの目標となる1ヶ月10万円の報酬を達成。
紆余曲折ありながら数十万円、100万円と少しずつ進み、
そうした経験から個人コンサルを立ち上げ他の人も稼がせることができた。
また、自分のサイトを希望者に売却できる「サイト売買」というシステムを知り、
売却にも成功している。
一昔前ならこのように会社に頼らず自力で稼いでいくのは難しかったと思うが、
偶然にも天職と言える仕事が見つかったのは本当に時代の流れだと思う。
本格的に稼げるまでは派遣の仕事をしながら家族に秘密で取り組んでいたが、
実績が出た頃に打ち明けるとやがてすんなりと受け入れてくれた。
そのように自宅で仕事を始めた私は人間関係やオンとオフを意識することが少なくなった。
窮屈なスーツを着なくていいし苦痛な満員電車に乗ることもない。
疲れたらすぐそばのベッドに寝転がり、動画や音楽を視聴しながら楽しく作業できる。
一般的な世間の休日を気にせず、
休日を今か今かと心待ちにする必要もない。
会社員時代、翌日が仕事だという現実が迫ってくると一気に憂鬱になりがちだったが、こうした感情もいつの間にか消えていた。
そのような天職に出会い毎日楽しんでいるが、一方で苦労の連続でもある。
私の場合成果が出るまでかなり時間がかかったし、
決して要領は良くないので理解できるまで何度も講師に質問し教材を復習した。
アフィリエイトはある意味いかに検索結果の上位に表示できるかのゲームなので、
Googleによる度重なる検索順位の変動も脅威である。
なので、一度大きく稼げたからといって必ずしも毎月順調なわけではなく、
売上が一気に大きく落ち込むことも何度もあった。
そのたびに心が折れそうになることも数知れないが、
自宅での仕事は自分の店を持つことと同じなので
そうした点も受け入れながらいかに生き残れるかを今も模索している。
そして、常に変化の激しい世界でエネルギーを失わないよう、
心身ともにバランスを崩さないことも大切だ。
会社員時代と変わらず早寝早起きは今も習慣にしており、
早朝から一気にやる事を片付けていくと効率よくまさに朝飯前の状態となる。
筋トレも欠かさず、以前憂鬱だった月曜日は朝からジムに通ってエネルギーを蓄え、1週間で1番テンションMAXな日に変えている。
また、「自分の機嫌は自分で取る」という言葉があるように、
成果が出れば大いに喜びながらも一時的な成功で終わらないよう冷静に今の自分の状況を見つめ直す。
特に最初の頃、自分では少しずつアフィリエイトに慣れてきたと思っても
コミュニティの中ではまだまだだった。
何かと先に大きな成果を出しているメンバーに嫉妬を感じてきたが
そういう負のパワーも自分を奮い立たすために大切だったと思う。
そんな私の内心と関係なく、大きな成果が出た時メンバーは盛大に祝ってくれたし
嫉妬するほど優秀なメンバーがいたからこそ諦めずにやることができた。
嫉妬が悪いのではなく、嫉妬「だけ」で終わるのがよくないのだろう。
今も自分より上位のサイトはいわば嫉妬の対象だし、
どうすれば追い越せるかを常に研究している。
このように、最初は災いのようなきっかけから出会った我が家での天職。
会社員時代は指示されるまま仕事をこなすだけだったが、
主体的に自分から動く毎日へと一変し人間的にも成長できた気がする。
コロナ禍を経て時代も大きく変わったが、それ以前に出会えた天職と共に
今後も変わらず歩んでいきたい。