おうちワークをしている私が、おうちワークに踏みとどまっている人へ伝えたいこと
青城 碧花
結婚して出産を4回経験しながら、15年間保育士一筋で来た私。
この15年の間に、たったパソコン一台だけで、それも家で仕事ができる時代がくるだなんて一体誰が想像できただろう。
きっかけは新型コロナウイルスによる緊急事態宣言だった。
未知なるウイルスの蔓延に怯える日々を過ごすのと同時に、これまでの「普通」が「普通」ではなくなってしまった日。
幸いにも、私の住んでいる地域の学校ではオンライン授業の切り替えが早かったため、すぐに自宅での学習が進められた。家でタブレット端末一台のみで先生とリアルタイムで授業を行っている子どもたちの姿を見て、突然私の脳裏に「家で難なく授業ができているんじゃ、もしかすると仕事も家でできるのでは?」と閃きが走った。
家でできる仕事ってなんだろう?
どんな仕事だったら家でできるんだろうとインターネットで調べていると「Webライター」という仕事があると知った。
調べていくうちに「そういえば私、作文書くのわりと得意な方だったな」とか、「自分で小説を書いて、作家に憧れていた時期もあったっけ」など、今まですっかりと忘れていた幼少期の記憶がどんどんよみがえっていき、瞬く間にWebライターの仕事に興味を持った。
この選択から私の人生と仕事に対する価値観は大きく変わり、まさしくターニングポイントとなったのだ。
おうちワークのメリットは、なんと言っても自分で全てのスケジューリングができることである。始業時間・終業時間を自分で決められるのはもちろん、子どもの行事に合わせて仕事を組んだり、保育園や学校からお迎え要請があってもすぐに対応できたりと、自分のライフスタイルに合わせたスケジュール調整が可能なことは本当に素晴らしいと思う。
我が家は保育園児・小学生・中学生の4人の子どもがいるが、特に小学生の子どもは学童保育に入っていないため、いつでも帰宅を出迎えることができる。
私は業務に余裕がある時はママ友とランチをしたり、観たかった映画を一人で観に行ったりもしている。平日の日中は比較的どこも空いているし、仕事や育児から離れて一人時間をご褒美にしていることでオンオフのメリハリがしっかりとつくのだ。
ワーキングママが働く上で一番の懸念点は、子どもの急な発熱や感染症による体調不良による欠勤だ。私自身も、今までは職場の上司や同じクラスの担任の先生に連絡し、朝から「すみません」と謝り倒していたことも多々ある。その度にシフトの交換や、いつ熱が下がるか分からない、いつから出勤できるかも断言できない看病続きの毎日に気が気じゃなく、心から申し訳ないと思い続け、そんな自分に自己肯定感も下がるばかりだった。
しかし、おうちワークをすることでこれまでの懸念点から嘘のように解放され、ストレスフリーで仕事に集中できる日々が今では日常となっている。
その一方で、おうちワークをする上での課題もある。特に私が気にしていることを2つ挙げるならば、1つ目は「自己管理は永遠の課題」ということだ。
おうちワークでのスケジューリングの自由さはメリットでもあるが、責任も全て自分で負わなければならない。特にWebライターは締め切りがあるので、スケジュール管理は重要だ。
私の場合、子どもの行事や習い事の管理と、自分のプライベートや仕事のスケジュール管理をするのでアナログの手帳が欠かせない。仕事用とプライベート用で手帳は分けているが、プライベートの予定を把握しながら仕事の締め切りを遡って余裕を持たせたスケジュールを組むというのは、はじめこそ目が回るようで大変だった。しかし、慣れてくれば自分の作業時間やリソースというものが段々と分かってくるようになるし、毎日タスクをこなしていくのは達成感があって楽しい。今ではまるで気分はプロの秘書のように自己管理を徹底している。
2つ目は「環境を整えることは超重要」ということだ。
私は、はじめこそおうちワークをリビングのダイニングテーブルを使って仕事していた。
子どももリビング学習でダイニングテーブルを使うため、夏休みなどの長期休暇の時は私はキッチンカウンターにパソコンと椅子を持ってきて子どもの宿題を見ながら執筆をする、なんてこともあった。
しかし、本来仕事をすべき場所ではない場所での長時間の執筆は、いくら途中で休憩を挟んでも目や肩・腰を必要以上に酷使して疲れるし、ダイニングテーブルの視界に映るものが気がかりで執筆が進まないなど集中力が途切れることもしばしば。
おうちワークを末永くやっていくと腹をくくった私は、リビングの一角にパソコンとちょっとした資料をおけるほどの小さいパソコンデスクとデスクチェアを購入。集中して仕事に取り組める作業スペースを整えることは、作業効率を挙げることはもちろん、生産性にも繋がるので重要だと身をもって体感した。
今はまだ子どもの目が離せないのでリビングの一角で仕事をしているが、いずれ子どもが大きくなって手が掛からなくなったら、自分だけの作業部屋を作ることが今の私の夢の一つでもある。
「全集中モードで執筆したい!」「たまには気分転換したい!」そんな時はカフェに行って美味しい珈琲を飲みながら執筆することもある。最近は最寄り駅からひと駅行ったところにリモートワークの設備が整ったコワーキングスペースもオープンしたので、そこもちょっと気になっている。おうちワークは自宅はもちろん、自分の好きな場所で好きな時間に好きなだけ働けるということも魅力の1つだろう。
また、「おうちワーク=家に引きこもって誰とも話さない」「孤独」のイメージが強いかもしれないが、これまた意外と人と話していたりする。もちろん執筆に集中する日もあるが、クライアント様とオンラインを通してミーティングをしたりすることもあるので、基本は一人でもくもくと作業していることがほとんどだが、誰とも話していないからさみしいと感じたことは今まで一度もない。
おうちワークは子どもを家で見ながら働きたいママさんにもぴったりだが、親の介護をしている方にも適していると思う。保育園に入れず空きを待っている待機児童のママの話を聞く一方で、私の周りでも最近では会社勤めをしながら親の介護をしている方の苦労話を聞く機会が増えてきた。40代という年齢もあるかもしれないが、これから子育てがひと段落すると親の介護が待ち受けている。もし自分もそうなった時は、これまで培ってきたおうちワークライフを崩さず親に寄り添うことが一番ベストだと考えている。
「在宅で仕事をしている」と話すと、どんなことをしているのかと興味を持って聞いてくるママ友が意外と多くいる。在宅ワークが自分にもできるのであればやってみたい、気になってはいるけれど一歩踏み出せないという人がほとんどなので、そういう人には私は全力でおうちワークの素晴らしさをついプレゼンしてしまう。
まだまだ企業に勤める働き方が一般的な世の中ではあるし、家で働く、働けるということが定着していないため周囲に理解されないこともあるかもしれない。
けれど、自分の思うように働ける理想の環境が整っているおうちワークの素晴らしさがどんどん世に広まっていってほしいと願う。