Document

No.33「ナマケモノのすみか」

ナマケモノのすみか

竹本美穂

「お前みたいな朝が弱い奴はロクな社会人になれないぞ」
高校時代の担任が私に言い放った言葉である。
それもそのはず、当時の私は1週間に3回は寝坊で1時間目の授業に間に合っていなかった。朝が弱く、人よりも睡眠時間を多く取らないとすぐに疲れてしまうのである。

 

そんな私は数年後奇しくも高校教員になった。幼い頃からの夢が叶ったのである。
だが、社会人になって初めての1人暮らしが始まり、起こしてくれる母もいなくなったので、得意の寝坊で朝のHRに担任が来ないという失態を犯したこともあった。

 

色々あり、高校教員を辞めた今、在宅でオンラインの日本語教師をしている。私の仕事時間は午前10:00〜午後16:00、午後23:00〜午前2:00である。

 

この仕事の利点はいくつかある。まずオンラインだから化粧をしなくてもある程度見栄え良く映るため、仕事の5分前に起きればいいということだ。寝室から仕事部屋に移動するだけなので、朝の準備と通勤はものの5分である。さらに、日中の授業では、たまに生徒さんのドタキャンなどで、1時間の空きが出ることもある。だから、1時間授業をし、55分寝て、また1時間授業をするといった具合で働くこともできる。昼寝しながら仕事ができるなんて夢のようだ。

 

もう1つの利点は、夜中に働くことができる点だ。私は朝が弱い代わりに夜はとても強い。夜中起きていることはへっちゃらだ。大学生の頃はよくカラオケで朝を迎えたものである。さらに、2歳の子供を育てるシングルマザーであるため、午後22:30に寝かしつけを終わらせ、一息ついてからまた仕事を再開する。このようなことが可能なのは、生徒さんたちがアメリカなど時差が大きい国にいるからだ。こんな時間にレッスン可能な日本在住の日本人教師は多くないからとても重宝される。

 

社会人失格の烙印を押されても諦めることなかれ。ナマケモノのすみかは必ずこの社会にある。仕事も、1日も、自分の人生も実は自分でデザインすることができるのだ。そんなことを我が子の寝顔に呟きながら今日も深夜教室は幕を閉じるのである。

 

おうちワーク協会メールマガジン

PAGE TOP